完成したら、 持ち出せる |各話の 本文を 縦書きEPUB・Wordの 「原稿ファイル」に まとめられるように した
Plotoriaには作品データをまるごと書き出すバックアップはありましたが、「原稿」として持ち出す形がありませんでした。2026年7月20日、各話の本文だけを1冊にまとめる原稿ファイル出力(EPUB・Word・テキスト)を追加しました。縦書きの組版、400字詰め原稿用紙の換算、1巻分だけ切り出す話数範囲の指定。完成後の出口を、出版機能を持たずに設計した話を書きます。

Plotoriaは、止まった物語に戻るための場所として作ってきました。設定を整理して、AIと壁打ちして、また書き始める。その先に、ずっと薄いままにしていた工程があります。完成したあと、作品をどこへ持っていくかです。
作品データをまるごと書き出すエクスポート(Markdown・テキスト・JSON)は最初期からあります。ただこれはバックアップです。設定もアイデアもAI相談ログも全部入っていて、「読む」ためのものではありません。コンテストに応募する原稿、電子書籍リーダーで通し読みする1冊、と考えると、形が違いました。
本文だけを、1冊にまとめる
エクスポート画面に「原稿ファイル」を追加しました。各話の本文だけを話数順に束ねた、読むための1冊です。3つの形式で書き出せます。
- EPUB。縦書き・右から左のページ送りで組んだ電子書籍です。Kindleなどに送れば、自分の作品を本の形で通し読みできます。書きかけの長編を「読者として」読み直す体験は、推敲とはまた別の発見があります。
- Word(.docx)。明朝体・A4・話ごとに改ページした原稿です。公募やコンテストはWord形式の指定が多いので、応募原稿の土台になります。
- テキスト。本文のみのプレーンテキスト。txt指定の応募や、他ツールへの持ち込み用です。
本文に書いたルビ(|漢字《かんじ》)と傍点(《《…》》)は、EPUBではルビ表示とゴマ点に、Wordではルビと圏点に組まれます。記法のまま出るのはテキスト形式だけです。
ライブラリは1つも足していません。EPUBもWordのファイルも、実体は「ZIPに詰めたXML」なので、ZIPの書き出しから自前で実装しました。依存が増えないぶん、将来の保守が軽くなります。
縦書きの細部は、商業書籍の組版に合わせる
リリース直後に自分の作品で試して、すぐに気づいたことがあります。縦書きにすると、半角の数字が横倒しになる。「!?」のような記号の連続は、1文字ずつ縦に積まれて間延びする。ビューワーのバグではなく、縦書きCSSの仕様どおりの表示です。
紙の商業書籍は、これを縦中横(たてちゅうよこ)という組版で解決しています。2〜3桁の数字や「!?」の2連を、1文字分のマスに横組みで収める処理です。同じものを実装しました。
境界線も商業書籍の慣例に合わせています。4桁以上の数字(年号など)や「!!!」のような3連以上は、1マスに押し込むと潰れて読めなくなるため、あえてそのまま縦に積みます。文庫本の組版と同じ判断です。本文のテキスト自体には一切手を触れず、組み方の指定だけで実現しているので、原稿は無傷のままです。
1巻分だけ、切り出す
もう一つ、全話一括でしか書き出せない問題がありました。100話ある連載の応募原稿を作るとき、欲しいのは最初の25話だけだったりします。
「書き出す範囲」として開始話と終了話を指定できるようにしました。範囲を変えると、総字数と400字詰め原稿用紙の換算枚数がその場で再計算されます。公募の「原稿用紙◯枚以内」という規定に合わせて、どこで区切るかを確かめながら決められます。換算は単純な字数÷400ではなく、20字で折り返した行を20行で1枚と数える、原稿用紙に実際に組んだときの数え方です。
検討して、やめたことがあります。「1巻分の分量で自動分割する」機能です。1巻の分量はレーベルやジャンルで大きく違いますし、それ以上に、どの話で巻を切るかは「引き」をどこに置くかという創作の判断です。分量だけを見て機械が切ると、話の流れの中途半端な位置で巻が変わります。範囲指定とライブ換算があれば、同じ目的を作者の判断で達成できます。決めるのは、いつも作者です。
出版機能は持たずに、出口を作る
創作支援ツールの世界では、受賞や商業化まで面倒を見るサービスが増えています。Plotoriaはその方向には行きません。個人開発の身の丈という理由もありますが、それ以上に、公開や受賞を目指さなくても、止まった作品を自分のペースで完成させていいという場所でありたいからです。
そのかわり、完成した作品が「ここから先どこへでも行ける」状態は、きちんと作っておきたい。応募するもよし、Kindleに送って一人で読み返すもよし、他のツールに持っていくもよし。データを持ち出せる状態を保つことは、Plotoriaの最初からの原則です。今日の機能は、その原則を「バックアップできる」から「次の行動につながる形で持ち出せる」へ、一歩進めたものです。
Plotoriaの今日の開発
2026年7月20日の開発では、エクスポートに「原稿ファイル」を追加しました。各話の本文だけをまとめたEPUB(縦書き・縦中横対応)・Word・テキストの書き出し、話数範囲の指定、総字数と400字詰め原稿用紙の概算換算です。あわせてアプリ内ヘルプに原稿ファイルの記事を追加し、ロードマップも更新しています。
作品の権利は、いつでもあなたに帰属します。持ち出す自由も含めて、です(→ 作品の権利)。長編の整理と再開の考え方は長編小説はなぜ止まるのかでも書いています。完成まで辿り着いたら、今日の機能が次の一歩を支えます。
